[自分で物件調査02]ハザードマップの見方と地歴の調査

5.物件リスクを自分で調べる方法(立地編2)

前回の『地形』や『地盤』を調べる方法で標高や近隣の地盤が分かったものの、対象地(調査対象の土地)を直接ボーリング調査した訳でもなく、あくまでリスクを“推測”しているに過ぎません。“推測”でも、しないよりは全然ましなのですが、この“推測”を裏付けるというか、推測の確度を高めるために調べておいた方がいい情報を整理します。

(1) ハザードマップ

今まで立地としては「高台の平坦地」が一番良いとお伝えしてきましたが、ハザードマップを見ると、標高だけでは分からない情報が掲載されていることがあります。

地震ハザードマップ

地震ハザードマップ

上の図は「新宿区がけ・擁壁ハザードマップ(以下、地震ハザードマップと称します)」の曙橋駅付近から北東方面をキャプチャしたものです。ここで注目して頂きたいのが「」のドット柄です。



凡例を見ると、ドット柄は「大規模盛土造成地」となっています。過去に起きた大きな地震で一番被害が大きかった地盤が「盛土」であることを考えると、高台の平坦地であっても、「盛土造成地」にはリスクを感じます。

「盛土造成地」だから必ず危険という訳ではありません。詳細に調査をすれば、的確な造成工事が施されており安全である、と判断できる場合もあります。ここでは、物件リスクを見付ける方法という切り口なので、ここの盛土造成地の工事方法まで深掘りしません。地震ハザードマップを見ると、このような情報も見付かるということです。

そして、次に「」の部分をご覧いただくと、すごいですよね、凡例にある「がけ・擁壁の位置」「土砂災害警戒区域」「土砂災害特別警戒区域」「急傾斜地崩壊危険箇所」「液状化の可能性がある地域」の5項目が集中しています。擁壁の下の土地が液状化する可能性があるだなんて怖いですよね。新宿区にもこのようなリスクのある場所はあるのです。

地形や地盤を押さえた後、「地震ハザードマップ」を見ることで、より一層具体的なリスクを把握することができます。

洪水ハザードマップ

「新宿区洪水ハザードマップ」も新たな情報を与えてくれます。下のキャプチャ画像では、「」の道路沿いに浸水可能性が指摘されています。しかし、この場所は、上記の地震ハザードマップでは「高台(薄緑色に塗られた地域)」とされているエリアです。



「洪水ハザードマップ」が示す“浸水”の原因には2種類あり、一つは河川の氾濫であり、もう一つは下水管の排水量をオーバーする雨量があった場合の内水氾濫です。後者は、2019年台風19号の際の武蔵小杉で有名になりましたね。

」の道路沿いでは、この内水氾濫による浸水の恐れが指摘されているのです。(この箇所だけでなく曙橋周辺に河川はないので、この周辺の浸水可能性はすべて内水氾濫によるものです。)

また、「」の部分に注目していただくと、上下が薄いオレンジ色なのに、真ん中が黄色ですね。薄いオレンジ色は「0.5m~1.0m」の浸水可能性、黄色は「0.1m~0.5m」の浸水可能性です。この道路は北から南にゆるやかに勾配していまして、北側が1mの浸水をした際に、この黄色部分が0.5mで済むとは思えません。

区の危機管理課にヒアリングすると、「洪水ハザードマップ」は、この色を付けている地点ごとに判断をしているため、隣の地点の影響はあまり考慮していないんだそうです。ということは、この「」の部分にある黄色の場所は、薄いオレンジ色の場所と同じリスクがあると考えておいた方がいい、ということです。

このようなハザードマップの特性(限界?)を押さえて、リスクは保守的に、周辺の状況も加味した上で判断していただきたいと思います。

(2) 地歴

「災害リスクは町名・地名に表れる。」という話を聞いたことがある方も多いと思います。川・河や沼・池・谷等の付く町名・地名は、昔から水がよく出る場所であり、地盤も悪いということを示しているという訳です。

対象地が昔はどのような使われ方をしていたのかを知ることは、物件リスクを発見するきっかけになりえます。不動産鑑定でも、物件を評価する場合には、必ず古地図から見始め、住宅地図も数十年前のものから閲覧します。昔、川や池があった場所ではないか、工場として使われていた場所ではないか等をチェックするためです。私の事務所がある曙橋周辺でも、明治時代の地図を見ると東京監獄・市谷監獄であったエリアを見付けることができます。

この地歴を調べるのに役立つサイトには、
国土地理院地図 (http://maps.gsi.go.jp/)
goo古地図 (https://map.goo.ne.jp/history/)
古地図 with MapFan (https://labs.mapfan.com/etc/kochizu/)
等があります。

国土地理院地図 (http://maps.gsi.go.jp/)
こちらのサイトは、前回の要領で、左上の[情報]→[空中写真・衛星画像]と辿ると、1936年頃の空中写真を見ることができます。
goo古地図 (https://map.goo.ne.jp/history/)
江戸時代の切絵図から、明治時代の地図を見ることができます。私が地歴を調べる際には、必ず一度は見るサイトです。
古地図 with MapFan (https://labs.mapfan.com/etc/kochizu/)
江戸時代と昭和のオリンピック前の東京を、現在の地図と並べて見ることのできるサイトです。少しズレがある場所もありますが、対象地が江戸時代はどのような使われ方をしていたのかに興味があるのなら一度は見てみても損はありません。

江戸時代の地図の注目ポイントとしては、大まかには「高台は武家屋敷」「低地・谷地は町人街」です。武家屋敷といっても大大名になると、高低差のある庭園を造るために一部は低地を含む場合もありますが、高台の良い立地の多くは特権階級の武士が押さえています。

ハザードマップ等でリスクを指摘されていない「高台の平坦地」で江戸時代も武家屋敷だった地歴を持つ場所なら、「良い立地」と判定してもいいでしょう。

また、対象地につき昭和の年代も追ってみると、工場跡地である場合があります。対象地に現在建っているのがマンションの場合、土壌汚染などは除去工事が済んでいることがほとんどだと思いますが、問題ないことが確認できないと住みたくないですよね。
#ガソリンスタンドやクリーニング店であった履歴がある土地も土壌汚染の可能性が高くなるので要注意です。

以上のように、ハザードマップや地歴を調べることで、リスクをより的確に把握できるとともに、地形や地盤だけでは分からなかったリスクを発見することができるのです。

——————————————–
「不動産鑑定評価基準」に則った評価手法ではありませんが、一般消費者が自分で、家のPCやタブレットで簡単に物件調査ができる方法としての提案です。別の言い方をしますと、多くの業者はインターネットで調査できる、これくらいの調査もしないで物件を勧めてきます。一般消費者も、自分で情報を集め、できる範囲で調べることで、後で騙されたと後悔するような物件購入は防げるのではないかと思っています。